冨板尚倫公認会計士事務所

冨板尚倫公認会計士事務所 > 記事一覧 > 会社が上場を目指すときに行うべきこと

会社が上場を目指すときに行うべきこと

記事一覧

会社が上場を目指す場合、さまざまな要件をクリアする必要があります。
しかし、具体的にどのような項目を達成すれば良いかについては、あまり知られていません。
本記事では、会社が上場を目指す場合に行わなければならないことについて、形式要件と実質審査基準に分けて解説していきます。

上場とは

上場とは、自社の株式を金融商品取引所(東京証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所等)に公開し、一般の投資家が市場を通じて自由に売買できるようにすることです。
上場を果たすことで、企業は市場から直接、大規模な資金調達が可能になるほか、社会的信用力が向上し、優秀な人材の確保が容易になるなど、多くのメリットを得やすくなります。
ただし、上場は、企業の成長戦略の集大成とも言える目標ですが、達成するためには厳格な基準や期間を要します。

上場までにかかる期間

一般市場の上場を目指す場合、一般的には5年程度の準備期間が必要となります。
特に、上場審査をクリアするために必要となる内部管理体制の構築や組織改革に多くの時間がかかります。
準備期間の長さは、企業の現状の体制や業績の成熟度によって大きく変動しますが、余裕を持ったスケジュールで計画的に準備を進めることが重要です。

上場の条件

企業が金融商品取引所に上場するためには、金融商品取引所が定める以下の2つの大きな条件を満たす必要があります。

  1. 形式要件
  2. 実質審査基準

形式要件は客観的な数値基準、実質審査基準は企業の経営体制やガバナンスに関する基準を指します。
それぞれについて確認していきましょう。

形式要件

形式要件とは、上場する企業に求められる客観的な数値基準です。
これには、売上高、利益の額、時価総額、株主の数、純資産額等の財務および市場に関する指標が含まれます。
たとえば東京証券取引所では、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場といった各市場区分によって、求められる利益額や時価総額の基準が異なります。
これらの形式要件は、企業が上場に値する経済規模と市場での信頼性を有しているかを判断するために設定されています。

 実質審査基準

実質要件とは、企業の経営の健全性、継続性、およびコーポレート・ガバナンスに関する基準です。
これらは数値では測れない、企業としての「質」を評価するものであり、形式要件を満たしても、実質要件を満たさなければ上場はできません。
実質要件の審査では、特に以下の項目を満たしている必要があります。

  1. 内部管理体制の構築
  2. 監査法人の監査と会計基準の整備
  3. 組織・情報開示体制の確立
  4. 審査と公開

内部管理体制の構築

上場企業として信頼されるためには、不正やミスを未然に防ぐための強固な内部管理体制の構築が必要となります。近年、不正を防止するための内部管理体制整備は重視されてきています。
具体的には、株式公開準備室やIPO委員会といった専門のプロジェクトチームを設置し、職務権限規程、稟議規程、情報管理規程などの社内規程を整備・文書化することが求められます。
また、内部監査部門を独立させ、規程が適切に運用されているかをチェックする体制を確立する必要があります。

監査法人の監査と会計基準の整備

上場審査を受けるためには、監査法人による数期間にわたる監査を受けることが義務付けられています。
上場には、この監査を最低で2期分行う必要があります。
監査法人は、企業の会計処理が適正に行われているか、財務諸表が真実を反映しているかを確認します。
この際、会計処理の基準を、上場企業に求められる基準に合わせる必要があります。
また、財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの構築も重要です。

 組織・情報開示体制の確立

上場企業は、投資家に対して企業の状況を透明かつ公平に伝える義務があります。
そのため、情報開示体制の確立が求められます。
具体的には、独立性の高い社外取締役や監査役を選任し、取締役会の機能と監視体制を強化するコーポレート・ガバナンス体制を確立します。
また、投資家保護の観点から、適時開示情報や事業報告書などの作成・公表体制を整備する必要があります。

審査と公開

すべての準備が整った後、最終的に証券取引所の本審査と、主幹事証券会社による引受審査を受けます。
審査に合格した後、投資家保護のための有価証券届出書や目論見書を作成・開示します。
その後、株式の公開価格を決定し、機関投資家向けの説明会を実施するなどして、株式の売り出しを経て、晴れて上場が実現します。

まとめ

会社が上場を目指すには、利益額などの形式要件を満たすだけでなく、内部管理体制、会計基準、コーポレート・ガバナンスといった実質的な要件の整備が不可欠です。
上場準備は3年から5年という長期にわたるプロジェクトであり、計画的に体制を構築することが成功の鍵となります。
上場にあたっては、証券会社、公認会計士、税理士の支援が必要になります。
会社の上場をお考えの際は、公認会計士、税理士までご相談ください。